【徹底解説】不動産鑑定士試験と不動産鑑定士への道のり

【徹底解説】不動産鑑定士試験と不動産鑑定士への道のり

目次

※本記事の情報は、2023年11月19日時点で確認した情報をもとにして掲載しています。受験の検討や申込みにあたっては、必ず国土交通省の公開している不動産鑑定士試験の最新情報を参照するようにしてください。

不動産鑑定士とは?

資格の概要と重要性

不動産鑑定士は、「不動産の価値を評価する専門家」として知られています。文系の国家資格の中では、司法書士や公認会計士に次ぐような非常に高いポストの資格です。

不動産鑑定士は、文系資格でトップというわけではありませんが、不動産の資格の中では、トップに位置する資格となっています。例えば、土地家屋調査士や宅建士といった他の不動産関連の資格の上に位置することとなり、不動産に関する権威という面で見ると最も強い資格となります。

不動産鑑定士の仕事内容

不動産鑑定士の主な仕事内容は「①不動産の鑑定・評価」と「②不動産の調査・分析・コンサルティング」があります。

国土交通省の資料「私たち不動産鑑定士です」では、それぞれ以下のように述べられています。

①「不動産の鑑定・評価」について

土地や建物などの不動産の経済価値について、地理的状況や法規制、市場経済などさまざまな要因をふまえて鑑定評価を行い、鑑定評価額を決定するのが不動産鑑定士の業務です。中でも、法律に基づく「不動産鑑定評価書」の作成は不動産鑑定士だけに認められています。

②「不動産の調査・分析・コンサルティング」について

対象となる不動産をさまざまな角度から調査・分析し、その結果をふまえて、顧客のニーズに合わせた適切なアドバイスを行います。個人から企業まで、扱う不動産の規模や種類はさまざまです。また、国内に限らず海外の不動産まで対象を広げています。

また、日本不動産鑑定士協会連合会では、不動産鑑定士について次のように述べられています。

不動産鑑定士は、地域の環境や諸条件を考慮して「不動産の有効利用」を判定し、「適正な地価」を判断します。つまり、不動産鑑定士は、不動産の価格についてだけでなく、不動産の適正な利用についての専門家でもあります。

要するに、不動産鑑定士は、不動産の資格の中では、トップに位置する「不動産のプロフェッショナル」ということになります。

不動産鑑定士の年収

不動産鑑定士の年収の目安は次の通りです。
※当たり前ですが、どの会社に勤めるかや、独立するかどうか、社会人経験の有無、不動産業界経験の有無など様々な要因で年収は前後します。次の表の値はあくまでも目安として考えてください。

年次(ステータス) 年収の目安
実務修習中(合格後1-2年後) 450〜650万円
不動産鑑定士1年目(実務修習終了後) 600〜700万円
不動産鑑定士(独立した場合) 1000万円以上も狙える

※実務修習については後述しますが、試験に受かってすぐ不動産鑑定士になれるわけではなく、実務修習と呼ばれる研修的なものが1-2年あります。

不動産鑑定士になるまでの道のり

不動産鑑定士なるまでの流れ

不動産鑑定士になるまでには、単に試験を受けて合格すれば不動産鑑定士を名乗れるというわけではありません。どれだけ素早く試験勉強を突破できるとしても、出願から不動産鑑定士を名乗れるようになるには最短でも約2年間ほどかかる大掛かりな試験です。

不動産鑑定士試験になるための流れは次の通りです。

①出願 → ②不動産鑑定士試験(短答式試験) → ③不動産鑑定士試験(論文式試験) → ④実務修習/終了考査

とりあえず、時期についてのみ、2024年受験の「最短のケース」で整理をすると、

①出願:2024年2〜3月
②不動産鑑定士試験(短答式試験):2024年5月
③不動産鑑定士試験(論文式試験):2024年8月
④実務修習:2024年12月〜(修了考査:2026年1月)

となります。そして、修了考査に合格していた場合、不動産鑑定士への登録が2026年4月となります。
つまり、最短であっても2024年3月〜2026年4月の約2年かかるということになります。

何度も書いていますが、これは「最短のケース」です。ここから、内容について細かく見ていきましょう。

①出願

【出願時期】
まず、不動産鑑定士試験の出願時期は、2〜3月頃となります。令和6年(2024年)の試験を例に出すと、令和6年2月8日〜令和6年3月8日までが出願時期となっています。
3月は少ししか時間がないので、2月に出願と覚えておきましょう。

【出願方法】
出願方法には、郵送での申請と電子申請があります。
郵送での申請の場合、願書を国土交通省から取り寄せる必要があります。1月下旬頃に取り寄せ方法が発表されますので、それを見て取り寄せ、記入をし、郵送で申請することになります。
電子申請の場合は、その名の通り、インターネット上で申請することができます。ただし、電子申請は非常に分かりづらく、ミスが発生して、最悪受験できないということが発生する可能性もあるので、あまりおすすめはしません。心配な方は面倒でも郵送での申請を検討しましょう。

【受験料】
不動産鑑定士試験の受験料は12,800円となっています。

【受験資格】
受験資格は特になく、学歴や実務経験も不問です。

不動産鑑定士試験

不動産鑑定士試験は、2段階の試験となっています。1次試験に合格すると、2次試験を受験できるという形式となっています。

1次試験と2次試験は、受験科目、形式、難易度がほぼ異なっておりそれぞれ別の対策をする必要がある試験です。唯一共通しているのは、不動産鑑定士の軸となる「不動産の鑑定評価に関する理論」という科目名くらいです。

②不動産鑑定士試験(短答式試験)

まず、不動産鑑定士試験の短答式試験について解説をします。

【試験日】
試験日は令和6年の場合ですと、令和6年5月19日(日)となっており、5月中旬の日曜日に行われることが一般的です。

【試験科目と時間割、配点】
試験科目は「不動産の鑑定評価に関する理論」と「不動産に関する行政法規」の2科目で、試験時間はそれぞれ2時間の合計4時間の試験です。

日付 時間 科目 配点
令和6年5月19日(日) 10:00〜12:00 不動産に関する行政法規 100点満点
13:30〜15:30 不動産の鑑定評価に関する理論 100点満点

【試験形式】
試験形式は短答式試験という名前ですが、マークシートタイプの試験となっており、5つの選択肢から1つを選ぶ形式です。
※5つの選択肢から1つを選ぶといっても、「正しいものをすべて掲げた組み合わせはどれか」というような問題も多くある、かなり複雑なタイプの試験です。

問題の例:
【試験科目の内容】
「不動産の鑑定評価に関する理論」とは、不動産鑑定士の軸となる科目で、「不動産鑑定評価基準」やその留意事項をもととした問題が主に出題されます。
「不動産に関する行政法規」は、建築基準法の内容や、都市計画法の内容などが出題されます。
※宅建試験を受験されたことがある人なら分かるかと思いますが、「法令上の制限」と称される分野がイメージとしては近いです。

「不動産に関する行政法規」は覚えることが非常に多いため、難しく、どれだけ行政法規をやり込むかが短答式試験突破の肝となります。

なお、短答式試験の合格発表は6月下旬(令和5年は6月28日)となっています。合格している可能性がわずかにでもある場合は、気を休めず論文式試験の勉強を行う必要があります。

③不動産鑑定士試験(論文式試験)

短答式試験を無事合格できたら、不動産鑑定士になるにあたって最大の壁である論文式試験が待ち受けています。

【試験日】
試験日は令和6年の場合ですと、令和6年8月3日(土)〜令和6年8月5日(月)となっており、8月上旬の土、日、月に行われることが一般的です。
びっくりされた方もいるかと思います。そう、なんと3日間も試験があります。

【試験科目と時間割、配点】
試験科目は「不動産の鑑定評価に関する理論」と、「民法」、「経済学」、「会計学」の4科目です。

短答式試験と論文式試験の異なる点は、
①「不動産に関する行政法規」が論文式試験ではなくなる
②「民法」「経済学」「会計学」といった教養科目が新たに加わる
という3点です。

また、この4科目のうち、「不動産の鑑定評価に関する理論」については、理論と演習に分かれており、理論は2コマ分試験があります。分かり辛いので、時間割を見てみましょう。

日付 時間 科目 配点
令和6年8月3日(土) 10:00〜12:00 民法 100点満点
13:30〜15:30 経済学 100点満点
令和6年8月4日(日) 10:00〜12:00 会計学 100点満点
13:30〜15:30 不動産の鑑定評価に関する理論(理論) 100点満点
令和6年8月5日(月) 10:00〜12:00 不動産の鑑定評価に関する理論(理論) 100点満点
13:30〜15:30 不動産の鑑定評価に関する理論(演習) 100点満点

※上記は令和6年の時間割

科目ごとに配点を見てみると、次のようにまとめられます。

科目 配点
民法 100点満点
経済学 100点満点
会計学 100点満点
不動産の鑑定評価に関する理論 300点満点*

*うち100点は演習

「不動産の鑑定評価に関する理論」が半分を占めており、どれほど重要な科目であるかがわかります。(不動産鑑定士の鑑定評価と基本となる科目なので当たり前なのですが…)

鑑定評価に関する科目以外にも、不動産の鑑定をするのに必要となる「民法」「経済学」「会計学」といった教養科目も試験科目にあるかなりハードな試験であることがわかるかと思います。

【試験形式】
試験形式は論文式試験という名前からもわかる通り、記述式です。記述といっても、一問一答的な記述ではなく、与えられる問題に対して論述をしていく形式の問題です。
これは、実際の問題と解答用紙を見てみるとわかりやすいです。

問題の例:
次のような問題が2問出題され、2時間で解答します。

解答用紙の例:
次のような解答用紙が4枚用意され、1問につき2枚使用して解答していきます。

問題と解答用紙を見てもらうとわかるように、永遠と書く試験です。なんとなく覚えている、理解しているだけでは説明することができないので、合格することはできない、かなりハードな試験形式となっています。

【試験科目の内容】

各科目で出題される内容は次の通りです。細かく説明してもわからない人が多いと思うのと、実際に勉強していく中で全体像が掴めていくので、へぇ〜と思っていただければ十分かと思います。

科目 内容
民法 その名の通り、民法に関する問題が出題されます。
法律の解釈について、実際の事例を使って論証を行います。
経済学 ミクロ経済学とマクロ経済学について、基本的にはそれぞれ1問ずつ出題されます。
計算をするイメージがあるかもしれませんが、グラフの描写が重要となる場合が多いです。
会計学 会計学の理論的な理解が問われます。

会計と聞いて、簿記を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、簿記の内容や計算はあまり出題されません。

不動産の鑑定評価に関する理論(理論) 「不動産鑑定評価基準」と「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」をもととした問題が出題されます。
不動産の鑑定評価に関する理論(演習) 「不動産鑑定評価基準」とその留意事項で解説されているような不動産の鑑定評価について、実例を用いて計算をしていく問題が出題されます。
電卓を使って計算するようなイメージです。

④実務修習

短答式試験と論文式試験に合格後、そのまま不動産鑑定士になれるわけではなく、実務修習を受ける必要があります。実務修習の最後の修了考査に合格することで、正式に不動産鑑定士となれます。

【実務修習のコース】
実務修習のコースには「①1年コース」と「②2年コース」の2つがあります。その名の通り、何年かけて実務修習を行うかが違います。
1年コースを選択すれば、もちろんその分不動産鑑定士に早く慣れるというメリットがあります。しかし、あまりにもハードすぎて途中でリタイアする人が続出します…。
実務修習のみに専念できる余裕のある人でやる気もある人が1年コースを選択するようなイメージで、ほとんどのケースでは2年コースで実務修習を行います。
不動産鑑定の会社に勤めて実務修習を行う場合は基本2年コースです。

【実務修習の実施時期】
実務修習は12月からスタートします。
最速で合格した年の12月に実務修習をスタートし、その翌々年の4月に不動産鑑定士に登録ができます。
実務修習は、必ずしも合格してすぐ開始する必要はなく、合格の次の年から実務修習を行うということも可能です。

【実務修習の費用】
実務修習にかかる金額は、最大約110万円*です。実務修習を受ける環境によって異なります。
不動産鑑定業者に就職して、働きながら実務修習を受ける場合、会社が実務修習費用を負担してくれる場合もあります。
*110万円の内訳は、日本不動産鑑定士協会連合会に約35万円、実地演習実施鑑定業者または実地演習実施大学に最大約75万円を支払うため。

不動産鑑定士試験の難易度:合格率や合格最低点など

不動産鑑定士試験の合格率

不動産鑑定士試験の合格率は、約3.6%(2.9〜5.5%)です。合格者数は年によりますが、論文式の場合、120〜150人程度しか合格しません。
ただし、不動産鑑定士試験は2段階の試験のため、一概に●%というのは難しいです。どれくらいの難易度なのか見るために、令和5年の試験を例に計算をしてみます。

不動産鑑定士試験の申込者数、受験者数、合格者数:

申込者数 受験者数 合格者数
1次試験(短答式試験) 2072人 1647人 553人
2次試験(論文式試験) 1364人 885人 146人

この値をもとに計算すると不動産鑑定士試験の合格率は次のようになります。

不動産鑑定士試験の合格率:

合格率(合格者数÷受験者数) 合格率(合格者数÷申込者数)
短答式試験(1次試験) 33.6% 26.7%
論文式試験(2次試験) 16.5% 10.7%
短答式試験×論文式試験 5.5% 2.9%

一般的に合格率は、申込者数よりも受験者数を使用したほうが妥当ですが、論文式試験に申し込む人は、その年の短答式試験に合格した人と、昨年か一昨年までに合格して受験申込みをした人なので、受験者数ではなく申込者数を使ったほうが良いと考えると、

33.6%×10.7%=3.6%

となり、不動産鑑定士試験の合格率は約3.6%(令和5年)とするのが妥当となります。

いずれにせよ、非常に難易度が高く、狭き門であることがうかがえる数字なのではないかと思います。

※有効数字の取り扱いは表示桁数の+1桁で計算しています。

年齢別合格率の分析

どのような年代の人が不動産鑑定士試験に挑戦し、どれくらいの人が受かっているかを見ておくことは、敵を知ることになります。
不動産鑑定士試験に挑戦する受験者の年齢層とその合格者数・不合格者数、そしてその合格率を掲載します。ただ、実際の数値についてを表などで掲載してもわかりにくいので、グラフでお示しします。
※グラフの情報は、国土交通省の発表している不動産鑑定士試験のデータ(令和5年)をもとに作成しています。

短答式試験の年齢層別合格率


30歳以上35歳未満の受験者が最も合格率が高いですが、全体的に25%以上の合格率があります。

論文式試験の年齢層別合格率

もちろん、全体的に合格率は低いですが、50歳以上の受験者の合格率が顕著に低いのが特徴的です。

不動産鑑定士試験の難易度やレベル

宅建士と不動産鑑定士はどっちが難しい?

ネット上で散見される疑問ですが、これは明らかでして、不動産鑑定士の方が宅建士より圧倒的に難しいです。

合格率の観点で見ると、宅建士(宅建試験)は約17%で、不動産鑑定士(不動産鑑定士試験)は約3.6%で、圧倒的に不動産鑑定士のほうが低いです。
ただ、合格率で見るのは危険です。
勉強時間の観点で見ると、宅建士は400時間、不動産鑑定士は3000時間と天と地の差があります。
つまり、400時間勉強して約17%受かる宅建試験と3000時間勉強しても約3.6%しか受からない不動産鑑定士試験ということです。

試験形式もマークシートで2時間の宅建試験と、4時間のマークシートと12時間の記述試験がある不動産鑑定士試験は比較ができないレベルです。

なお、不動産関連の資格の難易度を順にすると、
不動産鑑定士>>>>>マンション管理士>>宅建士>管理業務主任者>賃貸不動産経営管理士
というイメージになります。

宅建士があれば不動産鑑定士は簡単?

宅建士の資格を持っていることは、不動産鑑定士の受験に有利に働くことは確かです。しかし、ステップアップくらいの気持ちでいると痛い目を見ることになります。
宅建士の資格は、不動産鑑定士試験の1次試験(短答式試験)の行政法規、2次試験(論文式試験)の民法と内容の重複があるため、その面では有利に働きます。

しかし、宅建で勉強するレベルは、不動産鑑定士試験の内容からしてみると基礎の基礎であるため、完全な初学者よりは取り掛かりやすいくらいの感じです。
宅建士を持っているというアドバンテージは想像より早く効力を失うと思うので、「宅建に受かったから不動産鑑定士も行けるだろう」というのは思わない方が良いかと思います。

不動産鑑定士試験の合格最低点と平均点

短答式試験の合格最低点と平均点

短答式試験の合格最低点は、200点満点中130〜150点(65〜75%)が目安です。
ただし、●点という基準があるわけではなく、その年の難易度や受験者によります。
※概ね7割を基準とすると公表されてはいます。

なお、いずれかの科目が著しく悪いと、合格点をとっていても不合格となる足切りの制度があるので、どちらかの科目を捨てるということはできません。

短答式試験の各科目の平均点:

科目 平均点
不動産に関する行政法規 50〜60点
不動産の鑑定評価に関する理論 60〜70点

論文式試験の合格最低点と平均点

論文式試験の合格最低点は、600点満点中350〜380点(58〜63%)が目安です。
ただし、短答式試験と同様に●点という基準があるわけではなく、その年の難易度や受験者によります。
※概ね6割を基準とすると公表されてはいます。

短答式試験と同様にいずれかの科目が著しく悪いと、合格点をとっていても不合格となる足切りの制度があるので、どれかの科目を捨てるということはできません。
短答式試験は2科目ですので、片方が悪ければ足切りの前に不合格の可能性が高いですが、論文式試験は科目数が多い分、足切りの可能性も高まります。
特に、経済学などの計算の入る科目は文系受験者の多い不動産鑑定士試験において「苦手だから他でカバーしよう」と思う人も多く蔑ろになりがちな科目です。

※足切りの基準は公表されていません。

論文式試験の各科目の平均点は以下のとおりです、全ての科目で半分もいかないことが多いです。このような試験で6-7割を得点することが求められます。

論文式試験の各科目の平均点:

科目 平均点
民法 45〜50点(100点満点)
経済学 40〜50点(100点満点)
会計学 40〜50点(100点満点)
不動産の鑑定評価に関する理論

(演習を含む)

120〜135点(300点満点)

試験の免除制度について

ここで、試験の免除関連についても説明しておきます。

短答式試験の免除制度について

短答式試験の受験が免除される場合があります。それは、昨年か一昨年に短答式に合格していた場合です。
初回受験の人は関係ない、と思うかもしれませんが、短答式試験に合格したその翌年と翌々年の短答式試験の受験は免除されるということになります。

今年は短答合格を目標にして、来年論文式の合格を目指すというような2年がかりでの受験方法も検討に入りますし、論文式で不合格になってしまっても来年以降の受験のハードルが下がることになります。
※短答式試験を受験しないということは、行政法規を勉強しなくて良いため、勉強すべき科目が1科目減ることになります。

論文式試験の免除制度について

ほとんどの人は免除されませんので、検討すべき必要はありませんが、念のため記載をしておきます。
民法、経済学、会計学が免除される可能性のある科目です。それらの科目について大学において教授または准教授を3年以上しているか、公認会計士などのより上位の試験で合格している場合には該当科目が免除されます。
基本はないと思うので、無視して大丈夫ですが、上記の説明を読んで、該当する可能性がある場合には受験案内を確認しましょう。

不動産鑑定士試験に合格するためには?

不動産鑑定士試験合格に必要な勉強時間の目安

不動産鑑定士試験に合格するためには、2000〜4000時間、勉強する必要があります。
個人差があるため、2000〜4000時間と幅が生じています。これだけ幅があると参考にし辛いと思いますので、どのような要因が勉強時間を長く/短くするのか解説していきます。

不動産鑑定士試験合格に必要な勉強時間の個人差について

勉強時間にあまり影響しない要因

鑑定理論の勉強は、他の資格試験などとも重複がないので、必要最低限の勉強時間が人によって大きく差が開くことはありません。
しかし、鑑定理論は不動産鑑定士試験の肝である科目ですので、どれくらい徹底的にやり込むかが、合否には影響してきます。

また、論文試験の会計学自体も、勉強時間という観点からは影響があまりありません。なぜなら、短答式試験直後からでも頑張れば間に合う科目であり、やろうと思えば短期集中で解決できる科目だからです。

勉強時間に影響する要因

先程、鑑定理論と会計学の勉強時間に個人差は少ないということを述べました。つまり、それ以外の科目は勉強時間に個人差が生まれやすいです。
つまり、短答式試験なら行政法規、論文式試験なら民法、経済学は勉強時間に個人差が出てきます。

例えば、民法の「対抗」について、何を意味しているかわかりますか?
普通の人は意味不明だと思います。しかし、大学で法律系の学部に行っていた人や、宅建試験の勉強をしたことがある人には分かる話です。
要するに、今まで勉強したことがあるのか、ゼロからスタートなのかで勉強時間が変わってきます。
※鑑定理論はみんなゼロからスタートということ。

行政法規:
宅建などの法令上の制限などを勉強したことがある人は、似たような話です。ただし、宅建よりも相当細かく聞かれるので、宅建とはレベルが全く違います。

民法:
こちらも宅建などで勉強したことがある人は、話が入りやすいかと思います。民法特有の表現に慣れるのには時間がかかるため、アドバンテージとなります。

経済学:
経済を勉強したことがある人、というのは少ないかもしれません。しかし、文系受験者が多い不動産鑑定士試験において、高校数学(微分や数列)に抵抗がない理系の人などは、基本的な数学を学ぶ必要がなく、若干のアドバンテージとなります。

結論:不動産鑑定士試験の勉強時間の目安

個人差があり、その要因についてお話してきました。結論として、次のような勉強時間のイメージをするのが良いでしょう。
もちろん、この時間勉強すれば合格できるという訳ではありません。ご自身が不動産鑑定士試験の受験勉強をする際の計画の参考として考えていただければと思います。

不動産鑑定士試験合格に必要な勉強時間の目安:

何かしらのアドバンテージ(宅建等)を持ち、勉強が得意な人 2000時間
一般的な人 3000時間
暗記や勉強が得意ではない人 4000時間

短答式試験と論文式試験の勉強時間の目安

短答式試験に●時間、論文式試験に●時間の勉強時間が必要ですと言うことは出来ません。
なぜなら、短答式試験までは短答の勉強、短答式試験から論文式試験までは論文の勉強というように分けることは難しく、短答式試験の前であっても論文式試験の勉強はしないといけません。
また、鑑定理論については「論文式試験の勉強を軸として普段は勉強し、スキマ時間や直前期に短答式試験の勉強をする」というのが主流です。

しかし、短答式試験から論文式試験まで約70日しかないことを考え、この期間に1日10時間で合計700時間勉強すると仮定すれば、短答式試験までに1300〜3300時間ほど勉強しておく必要があるということになります。

論文式試験を捨て、短答式試験の合格を目指す場合の勉強時間の目安

もし、論文式試験を次年以降に回すとして、短答式試験だけを合格したいんだという場合には、「不動産に関する行政法規」の勉強に300時間以上、「不動産の鑑定評価に関する理論」に500時間以上の勉強時間を想定しておくのが妥当でしょう。

各科目の勉強時間

これといった勉強時間を示せない、と言いながら、示してくれないと参考にできないと思いますので、各科目の勉強時間の配分の参考として提示します。

勉強時間の合計時間が3000時間となるように配分を作成してみました。

各科目に必要な勉強時間の配分の目安(3000時間の場合):

短答式試験 論文式試験 合計
鑑定理論 500時間 750時間 1250時間
行政法規 300時間 300時間
民法 400時間 400時間
経済学 400時間 400時間
会計学 300時間 300時間
演習 350時間 350時間
合計 800時間 2200時間 3000時間

不動産鑑定士試験合格のための学習計画

不動産鑑定士試験の受験には仕事を辞める必要がある?

まず、大前提として、不動産鑑定士試験は合格率が非常に低い超難関資格です。そして、2000〜4000時間も勉強をしないと合格が見えてこない資格です。
そのため、仕事を休職や退職して勉強することも視野に入れなければいけなく、実際に仕事を辞めて受験勉強をする人が多くいます。
※宅建士のように仕事をしながら取ることが当たり前の資格ではありません。

仕事を辞める?:
仮に3000時間勉強が必要だとして、1日10時間勉強しても300日(=10ヶ月)かかります。本気で合格(特に一発合格)を目指すなら、仕事を辞めて受験勉強に専念する覚悟は必要かと思われます。
※仕事を休職・退職して受験勉強する場合、落ちた場合にどうするのかなど、ある程度の計画は必要です。(仕事や貯金など)

仕事を辞めない?:
また、仕事をしながら受験をする場合、1日5時間勉強しても600日(=1年8ヶ月)かかります。仕事をしていない時間は常に勉強をする生活が少なくとも2年発生することになります。こちらも心身ともに負担がかかるので、相当の覚悟が必要です。
※仕事をしながらの場合、土日などの休みは10〜12時間ほど勉強をする必要が出てきます。

仕事をしながら勉強をする方法としては、不動産鑑定の会社に入ることが挙げられます。一部の会社では、不動産鑑定士の資格取得を奨励しており、試験の勉強会を開催する会社や、試験直前には休みにしてくれる親切な会社なども存在します。
不動産鑑定の業界自体に入りたい場合は、転職して、環境を整えるというのも考慮に入れるべきかと思います。

不動産鑑定士試験の受験は何年かかるのか?

不動産鑑定士試験の合格には上記で述べた通り、2000〜4000時間かかります。先程も軽く計算しましたが、仮に3000時間とした場合でさらに計算をしてみましょう。

1日中勉強に時間を費やせる状況だと仮定すると、
1日12時間の勉強で250日(=8ヶ月)、1日10時間の勉強で300日(=10ヶ月)もかかります。

仕事をしていたりして、あまり時間を確保出来ない状況だと仮定すると、
1日5時間の勉強で600日(=1年8ヶ月)、1日3時間の勉強で1000日(=3年)もかかります。

つまり、最短でも8ヶ月、長くて3年くらいの勉強期間を想定しておく必要があります。
1日どれくらいの勉強時間を確保できそうか、仕事を辞めるのかどうかも踏まえて、学習計画を立てましょう。
オーソドックスな学習計画(コース)を2つ提示しておきます。

【1年合格コース】
1年で短答式試験と論文式試験の合格を目指す。
短答式は絶対に受かり、論文式も可能な限り合格を目指します。論文式がもし落ちてしまったら来年以降で論文の合格をする想定です。
これが最速コースですが、かなりハードであり、勉強時間も相当必要です。受験前年の夏、遅くとも秋からはスタートを切りたいところです。

【2段階合格コース】
1年目で短答式試験、2年目で論文式試験の合格を目指す。
1年目は短答式の合格のみを考え、鑑定理論と行政法規に専念して勉強を始めます。短答式試験直後から論文式試験の科目をスタートさせ、翌年の論文式試験合格をする想定です。
時間はかかりますが、短答式の免除を利用し、2年かけて勉強するので無理が少なく、仕事を辞めなくても不動産鑑定士試験の受験が現実的なものとなります。
ただし、1日5-6時間の勉強は必須ですし、鑑定理論は論文式の勉強をすべきです。また、可能なら短答式の前に民法か経済学のいずれか1科目はスタートを切っておきたいです。

学習スケジュールのモデル

様々な勉強環境・背景がありますが、1年合格を目指す場合の勉強スケジュール例を次に示します。

不動産鑑定士試験に向けた理想的な学習スケジュール:

勉強開始時期は人によって違うため細かい時期は明記していません。もちろん早ければ早い方が良いですが、1日何時間勉強できるかから計算し、できる限り早くスタートを切りましょう。

勉強開始:
まずは鑑定理論の勉強からスタートします。
最初は意味不明なので、まずは不動産鑑定評価基準を1周する必要があります。基準の理解や重要な論点の暗記をするところから勉強します。

中盤①:
鑑定理論が落ち着いたら短答式試験で必要な行政法規を始めましょう。行政法規を一気に勉強したら、忘れないようにコツコツと勉強を継続します。

中盤②:
行政法規が落ち着いたら、民法と経済学をスタートしましょう。理解に時間がかかるので、いかにこの2科目を早くスタートするかがポイントです。

中盤③:
民法と経済学よりは比較的軽い演習のスタートを切ります。短答式試験もあるので、そこまでにある程度のレベルに到達したいです。

12月〜:
いよいよ短答式試験を意識する時期になります。行政法規の勉強を本格的にやっていきます。また、短答式直後から会計学を詰められるよう、一通り会計学の勉強をしておきます。逆に、会計学はこの辺まで手をつけなくてもどうにかはなります。自分の勉強の進捗と相談です。

短答直前(3月〜):
短答対策をメインとしながらも、民法、経済学、演習も継続しましょう。
鑑定理論はついに短答対策を本格化させます。ただ、論文の勉強も絶対に継続します。

短答直後〜論文直前:
やることをやるだけですが、会計学をこの時期にやろうと思っている人は会計学に時間を割く必要が出てきます。
メインの鑑定理論を極めながら、様々な科目で基本事項の確認や苦手潰しを行いましょう。

不動産鑑定士試験の勉強はいつから始めるべき?

再度、1日の勉強時間からかかる日数を計算して、日付を計算してみましょう。

1日12時間の勉強で250日(8ヶ月)の場合
→試験前年の12月
1日10時間の勉強で300日(10ヶ月)の場合
→試験前年の10月
1日8時間の勉強で375日(1年)の場合
→試験前年の8月
1日6時間の勉強で500日(1年5ヶ月)の場合
→試験前年の3月
1日4時間の勉強で750日(2年1ヶ月)の場合
→試験の前々年の7月

休職・退職などをして勉強に専念できる場合、試験前年の8月、どれほど遅くとも12月には勉強をスタートさせる必要があることがわかります。
もちろん、受験を志したら、⚫︎月から勉強しようと決めるのではなく、今すぐ勉強を始めましょう。

不動産鑑定士試験合格のための勉強法と参考書、サイト、学習のためのスマホアプリなど

科目ごとに、勉強法や参考書を解説しています。詳しくは各記事をご覧ください。

鑑定理論

鑑定理論の参考書と勉強法

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鑑定理論の参考書としては以下がおすすめ・必須となっています。詳しくは、参考書と勉強法の記事の公開までお待ちください。

論文式試験 鑑定理論 過去問題集 論文
論文式試験 鑑定理論 過去問題集 1965~2005年
要説不動産鑑定評価基準と価格等調査ガイドライン

鑑定理論の学習アプリ

不動産鑑定士の過去問アプリ:鑑定理論(短答式過去問)

不動産鑑定士の用語集アプリ:鑑定理論(論点チェック)

行政法規

行政法規の参考書と勉強法

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行政法規の参考書としては以下がおすすめ・必須となっています。詳しくは、参考書と勉強法の記事の公開までお待ちください。

不動産に関する行政法規 最短合格テキスト
不動産に関する行政法規 過去問題集 (上)
不動産に関する行政法規 過去問題集 (下)

行政法規の学習アプリ

不動産鑑定士の過去問アプリ:行政法規(短答式過去問)
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不動産鑑定士の一問一答(マルバツ)アプリ:行政法規(一問一答)
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経済学

経済学の参考書と勉強法

不動産鑑定士試験の経済学について、勉強法や参考書をはじめ、以下の記事で徹底的に解説をしていますので、そちらをご覧ください。

経済学の学習アプリ

不動産鑑定士のミニテストアプリ:経済学(論点チェック)
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民法

民法の参考書と勉強法

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民法 過去問題集

会計学

会計学の参考書と勉強法

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会計学 過去問題集

鑑定理論(演習)

鑑定理論(演習)の参考書と勉強法

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論文式試験 鑑定理論 過去問題集 演習