第2章 不動産の種別及び類型
不動産の鑑定評価においては、不動産の地域性並びに有形的利用及び権利関係の態様に応じた分析を行う必要があり、その地域の特性等に基づく不動産の種類ごとに検討することが重要である。【41】
不動産の種類とは、不動産の種別及び類型の二面から成る複合的な不動産の概念を示すものであり、この不動産の種別及び類型が不動産の経済価値を本質的に決定づけるものであるから、この両面の分析をまって初めて精度の高い不動産の鑑定評価が可能となるものである。【42】
不動産の種別とは、不動産の用途に関して区分される不動産の分類をいい、不動産の類型とは、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて区分される不動産の分類をいう。【43】
【44】
第1節 不動産の種別
Ⅰ 地域の種別【45】
地域の種別は、宅地地域、農地地域、林地地域等に分けられる。【46】
宅地地域とは、居住、商業活動、工業生産活動等の用に供される建物、構築物等の敷地の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいい、住宅地域、商業地域、工業地域等に細分される。さらに住宅地域、商業地域、工業地域等については、その規模、構成の内容、機能等に応じた細分化が考えられる。【47】
農地地域とは、農業生産活動のうち耕作の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいう。【48】
林地地域とは、林業生産活動のうち木竹又は特用林産物の生育の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいう。【49】
なお、宅地地域、農地地域、林地地域等の相互間において、ある種別の地域から他の種別の地域へと転換しつつある地域及び宅地地域、農地地域等のうちにあって、細分されたある種別の地域から、その地域の他の細分された地域へと移行しつつある地域があることに留意すべきである。【50】
Ⅱ 土地の種別【51】
土地の種別は、地域の種別に応じて分類される土地の区分であり、宅地、農地、林地、見込地、移行地等に分けられ、さらに地域の種別の細分に応じて細分される。【52】
宅地とは、宅地地域のうちにある土地をいい、住宅地、商業地、工業地等に細分される。この場合において、住宅地とは住宅地域のうちにある土地をいい、商業地とは商業地域のうちにある土地をいい、工業地とは工業地域のうちにある土地をいう。【53】
農地とは、農地地域のうちにある土地をいう。【54】
林地とは、林地地域のうちにある土地(立木竹を除く。)をいう。【55】
見込地とは、宅地地域、農地地域、林地地域等の相互間において、ある種別の地域から他の種別の地域へと転換しつつある地域のうちにある土地をいい、宅地見込地、農地見込地等に分けられる。【56】
移行地とは、宅地地域、農地地域等のうちにあって、細分されたある種別の地域から他の種別の地域へと移行しつつある地域のうちにある土地をいう。【57】
【58】
第2節 不動産の類型
宅地並びに建物及びその敷地の類型を例示すれば、次のとおりである。【59】
Ⅰ 宅地【60】
宅地の類型は、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて、更地、建付地、借地権、底地、区分地上権等に分けられる。【61】
更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。【62】
建付地とは、建物等の用に供されている敷地で建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地をいう。【63】
借地権とは、借地借家法(廃止前の借地法を含む。)に基づく借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいう。【64】
底地とは、宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいう。【65】
区分地上権とは、工作物を所有するため、地下又は空間に上下の範囲を定めて設定された地上権をいう。【66】
Ⅱ 建物及びその敷地【67】
建物及びその敷地の類型は、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて、自用の建物及びその敷地、貸家及びその敷地、借地権付建物、区分所有建物及びその敷地等に分けられる。【68】
自用の建物及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であり、その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない場合における当該建物及びその敷地をいう。【69】
貸家及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であるが、建物が賃貸借に供されている場合における当該建物及びその敷地をいう。【70】
借地権付建物とは、借地権を権原とする建物が存する場合における当該建物及び借地権をいう。【71】
区分所有建物及びその敷地とは、建物の区分所有等に関する法律第2条第3項に規定する専有部分並びに当該専有部分に係る同条第4項に規定する共用部分の共有持分及び同条第6項に規定する敷地利用権をいう。【72】
Ⅰ 「総論第2章不動産の種別及び類型」について
不動産の種別の分類は、不動産の鑑定評価における地域分析、個別分析、鑑定評価の手法の適用等の各手順を通じて重要な事項となっており、これらを的確に分類、整理することは鑑定評価の精密さを一段と高めることとなるものである。鑑定評価において代表的な宅地地域である住宅地域及び商業地域について、さらに細分化すると次のような分類が考えられる。【2005】
(1)住宅地域【2006】
① 敷地が広く、街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ、建築の施工の質の高い建物が連たんし、良好な近隣環境を形成する等居住環境の極めて良好な地域であり、従来から名声の高い住宅地域【2007】
② 敷地の規模及び建築の施工の質が標準的な住宅を中心として形成される居住環境の良好な住宅地域【2008】
③ 比較的狭小な戸建住宅及び共同住宅が密集する住宅地域又は住宅を主として店舗、事務所、小工場等が混在する住宅地域【2009】
④ 都市の通勤圏の内外にかかわらず、在来の農家住宅等を主とする集落地域及び市街地的形態を形成するに至らない住宅地域【2010】
(2)商業地域【2011】
① 高度商業地域【2012】
高度商業地域は、例えば、大都市(東京23区、政令指定都市等)の都心又は副都心にあって、広域的商圏を有し、比較的大規模な中高層の店舗、事務所等が高密度に集積している地域であり、高度商業地域の性格に応じて、さらに、次のような細分類が考えられる。【2013】
ア 一般高度商業地域【2014】
主として繁華性、収益性等が極めて高い店舗が高度に集積している地域
イ 業務高度商業地域【2015】
主として行政機関、企業、金融機関等の事務所が高度に集積している地域
ウ 複合高度商業地域【2016】
店舗と事務所が複合して高度に集積している地域
② 準高度商業地域【2017】
高度商業地域に次ぐ商業地域であって、広域的な商圏を有し、店舗、事務所等が連たんし、商業地としての集積の程度が高い地域【2018】
③ 普通商業地域【2019】
高度商業地域、準高度商業地域、近隣商業地域及び郊外路線商業地域以外の商業地域であって、都市の中心商業地域及びこれに準ずる商業地域で、店舗、事務所等が連たんし、多様な用途に供されている地域【2020】
④ 近隣商業地域【2021】
主として近隣の居住者に対する日用品等の販売を行う店舗等が連たんしている地域【2022】
⑤ 郊外路線商業地域【2023】
都市の郊外の幹線道路(国道、都道府県道等)沿いにおいて、店舗、営業所等が連たんしている地域【2024】
その他
※国土交通省が公開している不動産鑑定評価基準(平成26年5月1日一部改正)をサイトに対して最適化するよう、必要に応じて一部を改変しています。正確な記載については、国土交通省が公開している不動産鑑定評価基準をご参照ください。また、誤りだと思われる部分を発見した際には、お問い合わせフォームよりご指摘いただけますと幸いでございます。